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修了者の声 長友謙治(2016年度博士課程修了)

社会人大学院生の経験から

長友謙治(農林水産省農林水産政策研究所政策研究調整官)

 私は、国の行政官として長く働いてきました。なぜ大学院で勉強する気になったかといえば、理由は色々ありますが、一つだけ挙げるとすれば、同じ職場で年を重ねていくと、どうしても仕事の中心が組織の管理・運営になってきますが、もともと好きなのは自分の頭と手足を使って何かを作ることですから、時間切れになる前に、研究という分野で、それができるだけの能力を確立しておきたかったということかと思います。

 個人の事情はそこまでにして、ここでは、スラブ・ユーラシア研究センター(以下「スラブ研」)の大学院である文学研究科スラブ社会文化論専修で研究してみようと思っている社会人の方に参考になるようなことを、私の経験からQ&Aの形でまとめてみました。少しでもお役に立てば幸いです。

  Q: なぜスラブ研の大学院を選んだのですか?
A: 私が研究対象とするロシアの農業・農政、それも経済史ではなく現在の農業・農政を専門とする研究者は、現役では日本全国で5人もいないと思います。その一人である山村先生がスラブ研におられたことが志望を決めた最大の理由でした。  お恥ずかしいことに入ってから知ったのですが、スラブ研は、我が国におけるスラブ・ユーラシア地域研究の拠点と位置づけられているだけあって、この地域の研究に関しては、様々な分野の第一線の先生方が集まっており、図書館に収蔵されている文献の質・量も全国有数です。セミナーや研究会などで内外の大学や研究機関の専門家と接する機会もしばしばあります。自分の専門分野を深めるだけでなく、地域研究者としてバックグラウンドを広げることができますので、今から振り返ると、これが大変良かったと思います。

 Q: 札幌に住んで大学に通わないと博士号は取れませんか?
A: 修士課程は、ゼミ形式の授業で多くの単位を取らなければならないので、札幌に住んで大学に通う必要があります。私も修士課程では職場を休職して札幌に2年間住みました。  一方、博士課程では修士課程のような授業はありませんので、最初から東京の職場で勤務しながら、前期・後期各数回札幌に行くという形でした。スラブ研の大学院では、毎週金曜日に院生全員参加の「総合演習」というものがあり、院生は前期、後期とも一回ずつ、ここでの報告を求められます(博士課程では必修単位にはならないが、専修において総合演習への参加を義務付け)。そのため博士課程の院生も、少なくとも各期に1回は札幌に行きます。このほか必要に応じて指導教員と相談するために札幌に行くことになります。博論の提出が近づくにつれて札幌に行く回数が多くなりますが、それでも総合演習の1回も含めて半期に2〜3回でした。
 なお、私の場合、修士号を持たず、実務上の研究実績もない状態で始めたので、修士課程から入りましたが、修士号がなくても研究実績などがある場合には、直接博士課程に入ることが認められる場合もあるようですから、文学研究科のウェブサイトで募集要項を読んだうえで、教務係などに確認されるとよいと思います。

  Q: 博士論文は3年で書けますか?
A: 可能ですが、率直に申し上げて容易ではないと思います。私の場合は、博士課程に5年間、修士課程に3年間(実質的には最初の半年を除く2年半)かかりました。博論の内容の3分の1強を修士課程での成果が占めていることを考えれば、大学院に入ってから博論を仕上げて博士号を頂くまでには足かけ8年を要したことになります。とはいえ、これはほとんどゼロから研究を始めた場合のことですから、すでに修士号をお持ちか、相当する研究実績がある方で、既に博論の種がある程度揃っているなら、3年での博士課程修了も可能だろうと思います。  しかし、それは結構大変です。指導教員から博士論文執筆のゴーサインを頂くための目安としては、査読付き論文を3本書かなければなりません。査読付き論文を1本書こうとすれば、一応の形ができた段階で学会報告を行い、そこでの指摘を踏まえて論文を仕上げ、学会誌に投稿し、レフェリーによる査読を受けて修正し、採択されてようやく掲載となりますので、この一サイクルには少なくとも1年程度はかかります。したがって、博士課程を3年で終えるというのは最小限の期間です。
 私の場合、官庁の文書を書くことには長い経験を持っていたのですが、学術論文にはまた独特のものがあり、何をテーマに選び、どのような作法に従って書き、どの程度の分量でまとめるか、そこは別のスキルが必要になります。また、研究内容が経済分野に関係していれば、ある程度は計量的な分析手法を習得することも必要になります。このあたりは、指導教員から御指導を頂きつつ、論文の査読でレフェリーから頂く厳しい御指摘に対応していく中で身につけていくことになります。私は、これらに時間を要したことに加え、職場の仕事もありましたから、結局博士課程に5年在籍することになったように思います。
 社会人で、かつ仕事もしながらという条件であれば、無理に3年と考えずもう少し気長に考えた方が良いかもしれません。授業料の方は、休学を間に入れることなどによって負担を増やさないことができます。そのあたりは、教務係とよく相談されるとよいと思います。博士の就職が厳しい中で、職を持っていて後顧の憂いがないのが社会人大学院生の最大にしておそらくは唯一の強みですから、ここはある程度気長に考えた方が良いかもしれません。

 最後に、指導教員の山村先生、田畑先生をはじめ、スラブ研の先生方及び職員の皆様には長い間大変お世話になりました。心よりお礼申し上げますとともに、これからも引き続きよろしくお願い申し上げます。

(2017年4月11日)


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