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修了者の声 真弓浩明(2015年度修士課程修了)
学生生活の最後の日に
真弓浩明
私は他の人に比べれば優柔不断な覚悟でスラ研の門を叩いてしまった。第一に、研究を円滑に進めるために必須である語学力が十分ではなかった。出身学部が法学部だったため、英語の勉強はさぼりがちで、ロシア語についてもスラ研に入る数か月前から手を付けたという程度だった。第二に、ロシアの政治・経済を深く研究したいという気持ちを持っていたものの、スラ研で学ぶことは私にとって消極的な選択だった。私は学部生のとき外交官になることを目指していたが、努力が及ばず、良い結果が得られなかった。私は外交官になるために自分の能力を高め、また自分の進路を考え直す期間を設けるためにスラ研に進学することを決めた。
当初そうした覚悟の甘さをはらんでいたが、スラ研で学んだ経験は私の生き方を変えてくれた。まず、1つの研究課題に全身全霊をかけて取り組む先輩方、同輩たちから良い刺激を受けた。私は飽き性でいろいろなことに手を出しがちだったが、様々な言語の文献を根気よくあさって論文や報告にまとめていく先輩方、同輩たちの姿を見て、物事に一所懸命に取り組む忍耐を学んだ。私が修士課程1年生だった年の秋、当時の2年生の先輩方は1月上旬の修士論文の締め切りに向けて執筆作業を本格化させ、時を同じくして博士課程に在籍していた先輩方も研究の成果を博士論文にまとめかかっていた。私はそのころ2限目の授業が始まるくらいの時間帯に院生室に来て5限目が始まる前くらいに家に帰るという生活サイクルで過ごしていたが、先輩方はいつも私よりも早い時間から院生室で作業を始め、私よりも夜遅い時間まで残って研究に励まれていた。傍目でその姿を見ながら「すごいなあ、とても真似できないなあ」とのんきに考えていたが、私自身も修士論文を書く段階に至ると自然と同じことをするようになっていた。
つぎに、精神的な面だけでなく、研究の実践的なやり方も教わった。先行研究を渉猟して研究テーマを定め、必要な参考文献を集めてそれらを読み込み、論文にまとめるという研究者にとっての基礎中の基礎を先生方、先輩方から繰り返し指摘されて、徐々に身に付けていった。スラ研が院生のために部屋を設けており、研究員の方々が身近にいるという環境を備えていることは研究が行き詰まったときにとても助けになった。院生室のパソコンの前で作業をしていると、先輩方が「いま何しているの?」と声をかけてくださり、その度に自分の研究の進捗状況を説明することは思考を整理することに役立った。また、総合演習での報告を終えた後、報告を聞いていた研究員の方がアドバイスをくださったり、未着手の参考文献を教えてくれたりもした。意見をくださる方々は自分とは異なる専門分野を研究している場合がほとんどであったが、指摘する要点がいつも的を射ていた。スラ研には様々な専門分野の研究者が地域研究の枠組みの下に集いながらも、互いの研究を気にかける風土があり、それから生まれる新鮮な刺激を学生の身にありながら享受することができた。
私は無事に修士論文を書き上げて学位をいただき、希望する進路に進むことができたが、そうすることができたのは先生方や先輩方、同輩、後輩をはじめスラ研で出会った多くの方々のおかげであり、何よりも私の長い学生生活を精神的・経済的に支えてくれた両親がいてくれたからだと思う。それらの人々への感謝の念を忘れずに、これからはいただいた御恩を返す気持ちで精進していきたい。
(2016年3月31日)
[修了者の声index]
- 山田愛実(2023年度修士課程修了)
- ベクトゥルスノフ・ミルラン(2022年度博士号取得)
- 生熊源一(2020年度博士課程修了)
- 大武由紀子(2018年度博士号取得)
- 谷原光昭(2018年度修士課程修了)
- 秋月準也(2017年度博士課程単位取得退学)
- 服部倫卓(2017年度博士課程修了)
- 長友謙治(2016年度博士課程修了)
- 植松正明(2015年度修士課程修了)
- 真弓浩明(2015年度修士課程修了)
- 井上岳彦(2014年度博士号取得)
- 斎藤祥平(2014年度博士課程修了)
- 野口健太(2011年度修士課程修了)
- 石黒太祐(2011年度修士課程修了)
- 宮風耕治(2010年度修士課程修了)
- 麻田雅文(2010年度博士課程修了)
- 高橋慎明(2009年度修士課程修了)
- 秋山 徹(2009年度博士課程修了)
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